11月23日(金・祝)、大阪市の旭区民センターで『参地直笑 祭 in 旭区』が行われました。この『参地直笑 祭』は、桂文枝の大阪市24区創作落語プロジェクトで、これまでにも住之江区や大正区など、各区の名所や名物、情報をふんだんに取り入れた、当区だけの創作落語を披露してきました。そして旭区でも、区民の皆さんの心つかむ落語を披露し、大いに盛り上がりました。
まずは大阪市旭区住みます芸人のマイスイートメモリーズが登場。花谷が「マイスイートメモリーズのことを見たことありますか~?」と尋ねると、会場からは拍手が起こりました。その直後、「知らないぞという方~?」と質問をすると、こちらの拍手の方が圧倒的に多く、「顔と名前だけでも覚えて帰ってくださいね」と改めてご挨拶。拍手の練習で盛り上げ、「参地直笑 祭!」「スタート!」の掛け声で、開幕しました。
オープニングトークでステージに文枝が登場するなり、大きな拍手と掛け声が飛び交いました。「いらっしゃ~い」のギャグでご挨拶する文枝。このギャグや長寿番組『新婚さんいらっしゃい!』が生まれた秘話などを明かしました。『参地直笑 祭』で大阪市24区の落語を作っている文枝、旭区は5つ目となります。創作落語を作るため旭区に5回通い、旭区在住の弟弟子や大学の後輩からも情報を仕入れたと続けます。また、実際に商店街の方にリサーチしたと詳細に説明、一体どんな噺が出来上がるか期待が募りました。
また、区内の史跡名勝の前で記念撮影を。その様子もバックスクリーンに映し出されました。「旭区はとにかく安い!」と声を大にする文枝。「住みよい街、かつ便利だと実感しました」と力を込めました。そうして出来上がった落語は「しあわせのシャッター」というタイトルに。各区のご当地落語に「しあわせ」とつけており、そこには「どの区の皆さんもしあわせになってほしい」との願いを込めているのだと文枝。
「しあわせのシャッター」を披露する前に、まずはスマイル、桂三実のネタで盛り上がります。登場したのはスマイル。早速「よしたかに似ている芸能人がいると思いませんか?」という瀬戸に客席からは微妙なざわめきが起こり、真剣白刀取りや、よしたかの"昔は悪自慢"では瀬戸の厳しいツッコミが終始飛び交い、会場を盛り上げました。
三実は落語「味噌豆」を口演。店の丁稚と旦那が味噌を作るために炊いている豆をつまみ食いするという噺です。旦那の目を盗んで豆をつまみ食いする丁稚の定吉。その様子を愛嬌たっぷりに演じました。
いよいよ創作落語「しあわせのシャッター」のお披露目です。マクラでは、「この世界に入って最初の仕事が旭区でした。52年半前、老人ホームで落語をしたんです」と思い出を語ります。そして、高齢になると旦那さんと奥さんの立場が逆転、女性がいかに強いかというエピソードで盛り上げました。
「旭区の商店街でも高齢化社会が進んでおり、若い後継者に悩んでいるそうですね」と話しながらネタ「しあわせのシャッター」へ。商店街の会長、副会長を務める高齢の男性の会話から始まりました。娘が夫を連れてUターン、店を継いでくれるとうれしそうに語る副会長。「旭区のおなごは男を連れて帰ってくると昔から言われている」と、旭区民の皆さんならよく知っているフレーズを。「暮らしええのが旭区や」と言いうセリフでは拍手が沸き起こり、「衣料が安い、食べ物も安く、人が優しい。年寄は何でも教えてくれて、商店街の人も地域の子どもたちを自分の子どものように見守って育ててくれる」と、旭区の良さをアピールします。
そのうち200軒ある千林商店街でも14、5店舗がシャッターが降りていることを憂う二人。「この頃は整骨院が増えた」というセリフではどっと沸き、どんなお店が旭区にあったかという思い出話や、今でも賑わう名物のネタでも盛り上がりました。噺はやがて副会長の自宅へと舞台を移します。そこで描かれる温かな家族のエピソードでほっこりしつつ、思いもよらない展開にどよめきが。それでも「しあわせのシャッター」というタイトル通り、心が温まる噺で魅了しました。
最後は旭区の花田公絵区長と文枝とでトークを繰り広げました。司会進行を務めたのは三実です。まず、オープニングトークで映し忘れていた老人ホームでの高座風景を収めた写真を披露しました。文枝にとっては落語家になって初仕事の現場、「こんなにお客様が静かに聞いていると思わなかった。一番前にストーブが置いてあって、やかんの湯の方がやかましかったんです」と思い出を。続けて「ここでの体験はとても勉強になりました。このことが、今日につながっていると思います」と感慨深く語りました。
「花田区長から見て師匠の落語はいかがでしたか?」と三実が尋ねると「ありがとうございます。『しあわせのシャッター』で声を出して笑い過ぎて、喉がカラカラです!」と声を弾ませる花田区長。「楽屋では太子橋公園のイチョウが話題になり、かつてはあのイチョウが御堂筋のイチョウになったと聞いて...」と花田区長、噺に組み込まれた旭区のエピソードに感激されているご様子です。『しあわせのシャッター』では、文枝の後輩がモデルになって登場。馴染みのある店名を文枝が口にすると会場はさらに沸きました。
落語を作るため何回も旭区に訪れた文枝。「意外と近かった」との印象を。そして「花田区長は旭区のどこにお住まいなんですか?」と尋ねると、「本当のことを言うと......都島区民なんです!」と驚きの発言が。会場もどっと笑い声に包まれ、「旭区は住むところがいっぱいおまっせ。私はいずれ、旭区に住もうと思います」と文枝が語ると、大きな拍手に包まれました。花田区長も「『しあわせのシャッター』のように、旭区を出て行った方たちがまた旭区に戻ってくるような街にしたい」と意欲を見せられました。
最後に花田区長から花束を受け取った文枝は、「旭区には千林商店街のほかにも商店街がたくさんあります。もっともっとみんな元気になればいいなと思います。私は落語会で九州、北海道など全国を回っています。今回だけで終わらせず、日本各地で『しあわせのシャッター』を披露して、旭区を宣伝していきたいと思います!」と意気込みを語りました。